安全管理規定

令和6年8月29日 (事業者名 坂本 基道 )

目 次

第1章 総 則

第2章 経営代表者の責務

第3章 安全統括管理者及び運航管理者等の選解任

第4章 安全統括管理者及び運航管理者等の勤務体制及び職務並びに権限

第5章 運航計画の作成等及び運航に必要な情報の収集・伝達

第6章 運航の可否判断

第7章 輸送に伴う作業の安全の確保

第8章 輸送施設の点検整備

第9章 海難その他の事故の処理

第10章 安全に関する教育、訓練等

第11章 雑 則

   第1章 総 則

(目的)

第1条 この規程は、経営代表者が定める明確な安全方針に基づき、組織内に安全最優先意識の徹底を図り、全従業員がこれを徹底して実行すべく、当社の使用する船舶の業務(付随する業務を含む。以下同じ)を安全、適正かつ円滑に処理するための業務実施の基準を明確にし、もって一丸となって輸送の安全を確保することを目的とする。

(用語の意義)

第2条 この規程における用語の意義は、次に定めるところによる。

  (1) 安全マネジメント態勢:経営代表者により、組織内で行われる安全管理が、あるべき手順及び方法に沿って確立され、実施され、維持される状態

  (2) 経営代表者:事業者において最高位で指揮し、管理する個人

  (3)  安全重点施策:輸送の安全を確保する方針に沿って追求し、達成を目指すための具体的施策

  (4)  安全統括管理者:輸送の安全を確保するための管理業務を統括管理する者をいい、経営代表者が兼任する。

  (5)  運航管理者:船長の職務権限に属する事項以外の船舶の運航の管理に関する統轄責任者をいい、経営代表者が兼任する。

  (6)  運航管理補助者:運航管理者の職務を補佐し、運航管理者が職務を執行できないとき、その職務を代行する者

(7) 陸上連絡員:船長が安全統括管理者及び運航管理者を兼務している場合は、陸上に勤務する運航管理補助者をいう。

  (8)  運航計画:起終点、寄港地、航行経路、航海速力、運航回数、発着時刻、運航の時季等に関する計画

  (9) 発航:現在の停泊場所を解らんして次の目的港への航海を開始すること。

  (10) 基準航行:基準経路を基準速力により航行すること。

  (11) 入港:港の区域内、港湾区域内等において、狭水路、関門等を通航して防波堤等の内部へ進航すること。

  (12) 運航:「発航」、「基準経路及び基準速力による航行の継続」又は「着桟」を行うこと。

  (13) 反転:目的港への航行の継続を中止し、発航港へ引返すこと。

  (14) 運航基準図:航行経路(起終点、寄港地、針路、変針点等)、標準運航時間、航海速力、船長が直接操船する区間、その他航行の安全を確保するために必要な事項を記載した図面

  (15) 危険物:危険物船舶運送及び貯蔵規則第2条に定める危険物

   第2章 経営代表者の責務

(経営代表者の主体的関与)

第3条 船舶による輸送の安全確保のため、経営代表者は次に掲げる事項について主体的に関与し、全体の安全マネジメント態勢を適切に運営する。

 (1) 関係法令及び社内規程の遵守と安全最優先の原則の徹底

 (2) 安全重点施策の策定及び確実な実行

 (3) 重大な事故等に対する確実な対応

 (4) 安全マネジメント態勢を確立し、実施し、維持するために、かつ、輸送の安全を確保するために必要な要員、情報、輸送施設等を確実に使用できるようにすること。

 (5) 安全マネジメント態勢の見直し

(安全重点施策)

第4条 経営代表者は、関係法令の遵守及び安全最優先の原則の方針に沿って、具体的な施策を実現するため、達成度が把握できるような安全重点施策を策定、実施する。また、毎年この見直しを行う。

   第3章 安全統括管理者、運航管理者等の選解任

(安全統括管理者の選任)

第5条 経営代表者は、経営代表者に位置づけられ、海上運送法施行規則第22条の2の2に規定された要件に該当する者の中から安全統括管理者を選任又は自ら兼任する。

(運航管理者の選任)

第6条 経営代表者は、海上運送法施行規則第22条の2の3に規定された要件に該当する者の中から運航管理者を選任又は自ら兼任する。

(安全統括管理者及び運航管理者の解任)

第7条 経営代表者は、安全統括管理者又は運航管理者が次の各号のいずれかに該当することとなったときは、安全統括管理者又は運航管理者を解任(自ら兼務している場合は兼務を解く)ものとする。

 (1)国土交通大臣の解任命令が出されたとき。

 (2)身体の故障その他やむを得ない事由により職務を引続き行うことが困難になったとき。

   (3)安全管理規程に違反することにより、その職務を引続き行うことが輸送の安全の確保に支障を及ぼすおそれがあると認められるとき。

(運航管理補助者の選任及び解任)

第8条 経営代表者は、運航管理補助者を選解任する。

   第4章 安全統括管理者等の勤務体制及び職務並びに権限

(安全統括管理者等の勤務体制)

第9条 安全統括管理者、運航管理者及び運航管理補助者は、船舶を運航中は常時連絡できる体制になければならない。

(安全統括管理者の職務及び権限)

第10条 安全統括管理者の職務及び権限は、次のとおりとする。

 (1) 安全マネジメント態勢に必要な手順及び方法を確立し、実施し、維持すること。

 (2) 安全重点施策の進捗状況、情報伝達及びコミュニケーションの確保、事故等に関する報告、是正措置及び予防措置の実施状況等、安全マネジメント態勢の実施状況及び改善の必要性の有無を経営代表者に報告し、記録すること。

 (3) 関係法令の遵守と安全最優先の原則を徹底するとともに、安全管理規程の遵守を確実にすること。

(運航管理者の職務及び権限)

第11条 運航管理者の職務及び権限は、次のとおりとする。

 (1) 船長の職務権限に属する事項を除き、船舶の運航の管理及び輸送の安全に関する業務全般を統轄し、安全管理規程の遵守を確実にしてその実施を図ること。

 (2) 船舶の運航に関し、(船長と協力して)輸送の安全を図ること。

 (3) 運航管理補助者を指揮監督すること。

2 運航管理者の職務及び権限は、法令に定める船長の職務及び権限を侵し、又はその責任を軽減するものではない。

3 運航管理者が陸上連絡員の場合は、次条(1)から(4)号を実施するものとする。

(運航管理補助者の職務)

第12条 運航管理補助者は、運航管理者を補佐するほか、運航管理者がその職務を執行できないときは、その職務を代行するものとする。

  また、運航管理者の指揮を受けて次の事項を実施するものとする。

 (1) 陸上における危険物その他旅客の安全を害するおそれのある物品の取扱いに関する作業の実施

 (2) 陸上における旅客の乗下船及び船舶の離着岸の際における作業の実施

 (3) 陸上施設の点検及び整備

 (4) 乗船待ちの旅客に対する遵守事項等の周知

   第5章 運航計画の作成等及び運航に必要な情報の収集・伝達

(運航計画の作成及び変更)

第13条 運航計画を作成及び変更する場合は、運航管理者は使用船舶の性能、使用桟橋付近の状況、航路の交通状況及び自然的性質等についてその安全性を検討するものとする。

2 船舶、陸上施設又は港の状況が船舶の運航に支障を及ぼすおそれがあると認められる場合は、運航管理者は、運航休止、寄港地変更等の措置をとらなければならない。

(運航管理者の措置)

第14条 運航管理者は、次に掲げる事項を把握するものとする。

  気象・海象に関する情報、港内事情、陸上施設の状況、水路通報、港長公示等官公庁の発する運航に関する情報、乗船した旅客数、乗船待ちの旅客数、船舶の動静、その他、航行の安全の確保のために必要な事項

(船長の措置)

第15条 船長は、次に掲げる場合には必ず陸上連絡員に連絡しなければならない。

 (1) 発航前点検を終え出港するとき。

 (2) 着桟10分前になったときに着桟予定時刻

 (3) 着桟したとき。

 (4) 非常連絡事項(別紙)に定める事故が発生したとき。

 (5) 航行の安全に係わりを有する船体、機関、設備等の修理又は整備を必要とする事態が生じたとき。

2 船長は、次に掲げる事項の把握に努めるものとする。

 (1) 気象・海象に関する情報

 (2) 航行中の水路の状況

(連絡方法)

第16条 船長と陸上連絡員との連絡は、携帯電話等による。

(運航基準図等)

第17条 運航基準図に記載すべき事項は次のとおりとする。

 (1) 起点、終点及び寄港地の位置並びにこれら相互間の距離

 (2) 航行経路(針路、変針点、基準経路等)

 (3) 標準運航時間(起点、終点及び寄港地並びに主要地点通過時間)

 (4) 通航船舶、漁船等により、通常、船舶がふくそうする海域

 (5) 航行経路付近に存在する浅瀬、岩礁等航行の障害となるものの位置

 (6) その他航行の安全を確保するために必要な事項

2 船長は、基準経路、避険線その他必要と認める事項を海図に記入するものとする。

(速力基準等)

第18条 速力基準は、次のとおりとする。

(例) 速力区分         速力           毎分機関回転数

       最微速      5ノット     500rpm

       微  速      8ノット    1,000rpm              

       半  速     10ノット    2,000rpm                  

      航海速力    20ノット    4,000rpm                   

2 船長は、速力基準表を船橋内の操作する位置から見易い場所に掲示しなければならない。

(特定航法)

第19条 頭島漁港の航法

  船舶は、入港しようとするときは頭島漁港赤灯台を右に見て水路に入り、水路の右側を航行しなければならない。

 

   第6章 運航の可否判断

(発航の可否判断)

第20条 船長は、発航前に運航の可否判断を行い、発航地の気象・海象が次に掲げる条件の一に達していると認めるときは、発航を中止しなければならない。

       風速 10m/s以上  波高 1m以上  視程 500m以下

2 船長は、発航前において、航行中に遭遇する気象・海象(視程を除く。)に関する情報を確認し、次に掲げる条件の一に達するおそれがあると認めるときは、発航を中止しなければならない。

      風速 10m/s以上    波高 1m以上(夜間0.5m)

3 船長は、前2項の規定に基づき発航の中止を決定したときは、旅客の下船、保船措置その他の適切な措置をとらなければならない。

(航行の可否判断)

第21条 船長は、周囲の気象・海象(視程を含む)に関する情報を確認し、基準航行を継続した場合、船体の動揺等により安全な運航が困難となるおそれがあると認めるとき又は周囲の視程が500m以下となったときは、基準航行を中止し、減速、適宜の変針、反転等の適切な措置をとらなければならない。

(着桟の可否判断)

第22条 船長は、着桟予定地の気象・海象に関する情報を確認し、次に掲げる条件の一に達していると認めるときは、着桟を中止し、適宜の海域での待機、臨時寄港その他の適切な措置をとらなければならない。

      風速 10m/s以上  波高 1m以上  視程 500m以下

(運航の可否判断等の連絡及び記録)

第23条 船長は、運航中止の措置をとったときは、その旨を陸上連絡員に連絡しなければならない。

2 船長は、基準航行の変更、運航の可否判断、運航中止の措置を運航可否判断記録簿に記録するものとする。運航中止基準の達した、又は達するおそれがあった場合における運航継続の措置については、判断理由を記載すること。記録は適時まとめて記載してもよい。

3 運航管理者は、台風等の荒天時において、船長からの求めがある場合には、必要に応じ、避航や錨泊による運航中止の措置に関する助言等適切な援助に努めるものとする。

(陸上連絡員の援助措置)

第24条 陸上連絡員は、船長から臨時寄港する旨の連絡を受けたときは、当該寄港地における使用桟橋の手配等適切な援助を行うものとする。

   第7章 輸送に伴う作業の安全の確保

(作業体制)

第25条 陸上連絡員及び船長は、それぞれ陸上作業及び船内作業を両者緊密な連携の下に輸送の安全の確保に努めなければならない。

2 陸上連絡員は、乗船待機中の旅客の整理、乗下船する旅客の誘導、船舶の離着桟時の綱取り及び綱放し、タラップ等の旅客乗降用設備の付け離し操作等の作業を実施する。

3 船長は、乗下船する旅客の誘導、離着桟時における諸作業を実施する。

(危険物等の取扱い)

第26条 危険物の取扱いは、運航管理者の指示に従い、危険物船舶運送及び貯蔵規則等関係法令の定めるところにより行うものとする。

2 刀剣、銃器、兵器その他旅客の安全を害するおそれのある物品の取扱いについては、運航管理者の指示に従い、運送を拒絶するか又は一定の条件をつけて運送を引き受けるものとする。ただし、原則として船室に持ち込むことは拒絶しなければならない。

3 陸上連絡員は、旅客の手荷物、小荷物その他の物品が前2項の物品に該当するおそれがあると認めるときは、船長の指示を受けて運送申込人の立会いのもとに点検し、必要な措置を講ずるものとする。

(乗船作業)

第27条 離桟5分前になったとき、船長は、陸上連絡員に旅客の乗船を開始するよう合図し、陸上連絡員は旅客を乗船口に誘導する。

2 陸上連絡員は、乗船旅客数(無料幼児を含む。)を把握し、旅客定員を超えていないことを確認して、船長に乗船旅客数を報告する。

(離桟作業)

第28条 陸上連絡員は、離桟作業完了後、適切な時期に見送人等が離桟作業により危害を受けないよう退避させ、船長の指示により迅速、確実に係留索を放す。

(着桟作業)

第29条 陸上連絡員は、船舶の着桟時刻10分前までに着桟準備を行い、着桟に際しては迅速、確実に綱取作業を実施する。その際、係留索の急緊張等により危害を受けることのないよう十分注意する。

2 船長は、迅速、確実に係留作業を実施する。

3 船長は、着桟時の衝撃による旅客の転倒事故を防止するため、旅客へ着席や手すりへの掴まりを促す。

(係留中の保安)

第30条 船長及び陸上連絡員は、係留中、旅客の安全に支障のないよう係留方法、タラップ(歩み板)等の乗降用設備の保安に十分留意する。

(下船作業)

第31条 船長は、船体が完全に着桟したことを確認したときは、その旨陸上連絡員に合図する。

2 船長は、陸上連絡員と協力してタラップ等の乗降用設備を架設し、架設完了を確認した後、旅客を誘導して下船させる。

(発航前点検)

第32条 船長は、発航前に船舶が航海に支障ないかどうか、その他航海に必要な準備が整っているかどうか等を点検しなければならない。

(船内点検)

第33条 船長は、航海中、船内の状況に留意し、直接状況を見られない場所その他必要と認められる場所について点検するものとする。

(機器点検)

第34条 船長は着桟前、桟橋手前(防波堤手前)50m等着桟地の状況に応じ安全な海域において、機関の後進、舵等の点検を実施する。一日に何度も離着桟を繰り返す場合もその都度実施する。

(乗船待ち旅客に対する遵守事項等の周知)

第35条 陸上連絡員は、乗船待ちの旅客に対して次の事項を周知しなければならない。周知場所は旅客待合所又は発着場とする。

 (1) 旅客は乗下船時及び船内においては船長の誘導に従うこと。

 (2) 船内においては、乗船中の者に危害を加えるような行為又は迷惑をかける行為をしないこと。

  (3) その他旅客の安全に関して旅客に周知すべき事項

(乗船旅客に対する遵守事項等の周知)

第36条 船長は、船内の旅客が見やすい場所に次の事項を掲示しなければならない。

 (1) 旅客の禁止事項

 (2) 救命胴衣の格納場所及び着用方法

 (3) 非常の際の避難要領(非常信号、避難経路等)

 (4) 病気、盗難等が発生した場合の乗員への通報

 (5) 下船及び非常の際には船長の指示に従うこと。

(旅客に対する救命胴衣の着用に関する指示)

第37条 船長は、救命胴衣の着用に関し、旅客に対し以下の措置を講じなければならない。

 (1) 暴露甲板に乗船している旅客には、救命胴衣を着用させるよう努めること。

 (2) 12歳未満の児童には、船室内にいる場合を除き、常時、救命胴衣を着用させること。

 (3) 気象、海象の悪化等、利用者の安全確保のために必要と判断される場合には、救命胴衣を着用させること。

(飲酒等の禁止)

第38条 安全統括管理者等は、アルコール検知器を用いたアルコール検査体制を構築しなければならない。

2 船長は、飲酒等の後、正常に船舶運航業務ができるようになるまでの間及びいかなる場合も呼気1リットル中のアルコール濃度が0.15mg以上である間、船舶の運航をしてはならない。

   第8章 輸送施設の点検整備

(船舶検査結果の確認)

第39条 運航管理者は、船舶が法令に定める船舶検査を受検したときは、当該検査の結果を確認しておくこと。

(船舶の点検整備)

第40条 船長は、船体、機関、諸設備、諸装置等について、点検簿を作成し、それに従って、原則として運航前に1回以上点検を実施するものとする。ただし、当日、発航前点検を実施した事項については点検を省略することができる。

2 船長は、前項の点検中、異常を発見したときは、修復整備の措置を講じなければならない。

(陸上施設の点検整備)

第41条 運航管理者は、陸上施設チェック表に基づいて、運航前に1回以上、係留施設(浮き桟橋、岸壁、ビット、防舷材)、乗降用施設(タラップ、歩み板)、転落防止施設(ハンドレール、チェーン)等について点検し、異常のある個所を発見したときは、直ちに修復整備の措置を講じなければならない。

   第9章 海難その他の事故の処理

(事故処理にあたっての基本的態度)

第42条 事故の処理にあたっては、次に掲げる基本的態度で臨むものとする。

 (1) 人命の安全の確保を最優先とすること。

 (2) 事態を楽観視せず常に最悪の事態を念頭におき措置を講ずること。

 (3) 事故処理業務は、すべての業務に優先して実施すること。

 (4) 陸上従業員は、陸上でとりうるあらゆる措置を講ずること。

(事故等の範囲)

第43条 この規程において、「事故」とは当社の運航中の船舶に係る(1)~(4)に掲げる事象をいい、「事故等」とは事故及び(5)の事態(以下「インシデント」という。)をいう。

 (1) 旅客、乗員又はその他の乗船者の死亡、行方不明、負傷若しくは疾病又はその他の人身事故(以下「人身事故」という。)

 (2) 衝突、乗揚げ、火災、浸水、漂流、行方不明、機関停止等重大な機関故障又はその他の救助を必要とする船舶の海難事故

 (3) 航路の障害、港湾施設の損傷又は荒天等による運航の阻害

  (4) 強取(乗っ取り)、殺人、傷害又は暴行・脅迫等の不法行為による運航の阻害

 (5) 前記(1)~(3)の事象に至るおそれの大きかった事態

(船長のとるべき措置)

第44条 船長は、自船に事故が発生したときは、人命の安全の確保のための万全の措置、事故の拡大防止のための措置、旅客の不安を除去するための措置等必要な措置を講ずるとともに、事故の状況及び講じた措置を速やかに海上保安官署及び陸上連絡員等に連絡しなければならない。この場合において措置への助言を求め、援助を必要とするか否かの連絡を行わなければならない。

2 船長から海上保安官署等への速報は、別表「官公署連絡表」により、まず、「118」番に架電し、以後、海保の指示によるものとする。

3 船長は、自船が重大かつ急迫の危険に陥った場合又は陥るおそれがある場合は、直ちに遭難通信(遭難信号)又は緊急通信を発しなければならない。

4 事故が発生したときに、旅客の安全、船体の保全のために船長が講ずべき必要な措置はおおむね次のとおりである。

 (1)海難事故の場合

   ① 損傷状況の把握及び事故局限の可否の検討

   ② 人身事故に対する早急な救護

   ③ 連絡方法の確立

     ④ 旅客への正確な情報の周知及び状況に即した適切な旅客の誘導

   ⑤ 二次災害及び被害拡大を防止するための適切な作業の実施

 (2)不法事件の場合

   ① 被害者に対する早急な救護

   ② 不法行為者の隔離又は監視

   ③ 連絡方法の確立

     ④ 旅客に対する現状及び措置状況の周知と旅客の軽率な行為の禁止

   ⑤ 不法行為が継続している場合、中止を求める不法行為者への説得

(陸上連絡員のとるべき措置)

第45条 陸上連絡員は、通常連絡、着桟連絡等、船長からの連絡が異常に遅延し連絡がない場合、遅滞なく船舶の動静把握のために必要な措置を講じなければならない。

2 陸上連絡員は、前項の措置を講じたにもかかわらず船舶の動静を把握できないときは、直ちに「118」番により海上保安官署に連絡するとともに、関係者に通報しなければならない。

3 陸上連絡員は、事故が発生したことを知ったときは、速やかに、事故の状況について判明したものから逐次電話(FAXを含む)又は口頭で運輸局等に報告するものとする。インシデントが発生したときは、被害発生にまで及ばないことを見極めた上、後日記録するものとするが、同種事案が再発する可能性が高い場合は、遅滞なく、その状況を運輸局等に報告するものとする。なお、非常連絡事項を記載した報告様式(FAX用紙)を事務所に備え置くものとする。

4 事故の発生を知ったとき又は船舶の動静が把握できないときに陸上連絡員がとるべき必要な措置はおおむね次のとおりである。

 (1)事故の実態把握及び救難に必要な情報の収集

 (2)海上保安官署への救助要請

 (3)行方不明者の捜索又は本船の救助のための捜索船又は救助船等の手配

 (4)必要人員の派遣及び必要物資の補給等

 (5)船長に対する必要事項の連絡

 (6)医師、病院、宿舎の手配等の旅客の救護のための措置

 (7)乗船客の氏名の確認及びその連絡先への通知

(経営代表者のとるべき措置)

第46条 経営代表者は、事故の状況、被害規模等を把握・分析し、適切に対応措置を講じなければならない。また、現場におけるリスクを明確にし、必要な対応措置を講じなければならない。

(医療救護の連絡等)

第47条 船長及び陸上連絡員は、船内に医療救護を必要とする事態が発生したときは、乗船者に医師がいる場合はその医師の協力を要請することとし、不在の場合は別表「医療機関連絡表」により最寄りの医師と連絡をとり、その指示のもとに適切な措置を講じなければならない。

(現場の保存)

第48条 船長及び陸上連絡員は、事故の処理後、関係海上保安官署等と連絡をとりつつ、事故原因の調査を行うとともに、事件捜査の対象となる場所及び物品の保存に努めなければならない。

(事故の原因等の調査)

第49条 運航管理者は、事故原因及び事故処理の適否を調査し、事故の再発防止及び事故処理の改善を図るものとする。

   第10章 安全に関する教育、訓練及び見直し等

(安全教育)

第50条 安全統括管理者は、乗員及び陸上連絡員に対し、安全管理規程、海上衝突予防法等の関係法令その他輸送の安全を確保するために必要と認められる事項について理解しやすい具体的な安全教育を定期的に実施し、その周知徹底を図らなければならない。

2 運航管理者は、航路の状況、海難その他の事故及びインシデント(事故等の損害を伴わない危険事象)事例を調査研究し、随時又は前項の教育に併せて船長に周知徹底を図るものとする。

(訓練)

第51条 安全統括管理者は、事故処理に関する訓練を計画し、年1回以上これを実施しなければならない。訓練は、実践的なものとし、訓練の前後には打合せを行う。

(記録)

第52条 運航管理者は、前2条の教育及び訓練を行ったときは、その概要を記録簿に記録しておくものとする。

(見直し)

第53条 経営代表者は、年1回以上船舶及び陸上施設の状況並びに安全管理規程の遵守状況の他、安全マネジメント態勢全般にわたり見直しを行うものとする。さらに、重大事故が発生した場合にはすみやかに実施する。

2 見直しを行うに際し、安全マネジメント態勢の機能全般に関し見直しを行い、改善の必要性について評価し、改善に向け作業する。

3 見直しを行ったときは、その内容を記録する。

   第11章 雑 則

(安全管理規程の変更)

第54条 経営代表者は、関係法令の改正、使用船舶の変更等、この規程の内容に係る事項に常に留意し、当該事項に変更が生じたときは、遅滞なく規程の変更を決定する。

(安全管理規程等の備付け等)

第55条 安全統括管理者は、安全管理規程及び運航基準図を船舶その他必要と認められる場所に、容易に閲覧できるよう備付けなければならない。

2 安全マネジメント態勢を確立し、実施し、維持するために、作成した各種文書は適切に管理する。

(情報伝達)

第56条 安全統括管理者は、輸送の安全の確保に関する情報伝達を行うとともに容易に閲覧できるようにする。

2 安全統括管理者は、安全にかかる意見等の把握に努め、その検討、実現反映状況について各員へ周知する。

3 安全統括管理者は、輸送の安全を確保するために講じた措置、講じようとした措置等の輸送の安全にかかる情報を適時、外部に対して公表する。

   附 則

 この規程は、令和6年8月29日より実施する。
別紙 【非常連絡事項】 事故等が発生した場合の連絡は、原則として次の区分により行うものとする。

  (1) 全事故等に共通する事項

   船名、日時、場所、事故等の種類、死傷者の有無、救助の要否、当時の気象・海象

 (2)事故等の態様による事項

 事故等の種類連絡事項
衝突① 衝突の状況(衝突時の両船の針路、速力等又は岸壁等への接近状 況)
② 船体、機器の損傷状況
③ 浸水の有無(あるときはd項)
④ 流出油の有無(あるときはその程度及び防除措置)
⑤ 自力航行の可否
⑥ 相手船の船種、船名、総トン数、(用)船主・船長名(できれば住所、連絡先)
-船舶衝突の場合
⑦ 相手船の状況(船体損傷の状況、死傷者の有無、救助の要否等)
乗揚げ① 乗揚げの状況(乗揚げ時の針路、速力、海底との接触個所、船体傾斜、吃水の変化、陸岸との関係等)
② 船体周囲の水深、底質及び付近の状況
③ 潮汐の状況、船体に及ぼす風潮及び波浪の影響
④ 船体、機器の損傷状況
⑤ 浸水の有無(あるときはd項)
⑥ 離礁の見通し及び陸上からの救助の可否
⑦ 流出油の有無(あるときはその程度及び防除措置)

c  
火災① 出火場所及び火災の状況
② 出火原因
③ 船体、機器の損傷状況
④ 消火作業の状況
⑤ 消火の見通し
浸水① 浸水個所及び浸水の原因
② 浸水量及びその増減の程度
③ 船体、機器の損傷状況
④ 浸水防止作業の状況
⑤ 船体に及ぼす風浪の影響
⑥ 浸水防止の見通し
⑦ 流出油の有無(あるときはその程度及び防除措置)
強取、殺人傷害、暴行等の不法行為 ① 事件の種類
② 事件発生の端緒及び経緯
③ 被害者の氏名、被害状況等
④ 被疑者の人数、氏名等
⑤ 被疑者が凶器を所持している場合は、その種類、数量等
⑥ 措置状況
人身事故 (行方不明を除く)① 事故の発生状況
② 死傷者数又は疾病者数
③ 発生原因
④ 負傷又は疾病の程度
⑤ 応急手当の状況
⑥ 緊急下船の必要の有無
旅客、乗組員等の行方不明      ① 行方不明が判明した日時及び場所
② 行方不明の日時、場所及び理由(推定)
③ 行方不明者の氏名等
④ 行方不明者の遺留品等
その他の事故① 事故の状況
② 事故の原因
③ 措置状況
インシデント① インシデントの状況
② インシデントの原因
③ 措置状況